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アクアリウムを楽しむための住まいの工夫

実は水や水槽って建物にとってはとっても重たいものなんです。

サンゴ水槽の写真

水槽の重さと建物

水槽の重さ

たとえば120cm×60cm×60cmの厚12mm総ガラス大型水槽は、水槽だけで85kgにもなります。内容積は390Lですが、水深を50cmとすると水量はおよそ340Lになります。水を張った水槽の重さだけで400kgを超えます。その他、濾過槽やサンプなどの器具の重さを足すと、500kgは軽く超えます。

軽自動車の車体重量が750kgです。大型水槽だと簡単に置けそうな気になりますが、軽自動車を想像すると結構難しいことだと感じます。それも水槽の方が軽自動車よりもコンパクトで小さいのですから、より難しいことが分かります。

極一般的な60cmの規格水槽一式でおよそ60kgと成人男性1人程度の重さになります。重量が感覚的に掴みやすいです。

設置場所(水槽の設置は1階が安心です。)

水槽を置く場合、真っ先にその重量が気になります。ですが、その前に水槽には水が入っていることを考えたほうが良いかもしれません。

長くアクアリウムを楽しむほど水替え等のメンテナンスの回数は増えます。そのうちにホースを外してしまったとか、配管が外れたとかのアクシデントがあるでしょう。ミスはどれくらいで起こるでしょう?1%だと100回に1回、0.1%でも1000回に1回です。また、長く使ううちに水槽やフィルター、配管類も劣化します。そんなことが原因で水を漏らしてしまう事があります。

1階ならば床と床下を水浸しにしてしまったと、まだ笑いごとで済むかもしれません。ですが、2階より上、もしくは高層マンションなんかで水漏れを起こしてしまった場合は悲惨なことになります。特にマンションは下階の方は赤の他人で、損害賠償の対象となってしまいます。

きちんと維持管理をし、漏水事故が無いように日々気を配ったとしても安心できません。いつ起こるかわからない地震の揺れで結構簡単に水が溢れます。木造住宅だと震度4位の地震の揺れでほぼ水があふれ始めます。震度5にもなるとかなりの量の水があふれてしまうので気を付けてください。

バケツ1杯分の10Lほどでも溢すと下階ではボトボトと水がしたたり落ちてきます(恥ずかしながら経験者です)し、すぐ下にブレーカーがあるなど場合によっては電気系統にトラブルを生じるかもしれません。1階以外の上階に水槽を置こうとする場合は、漏れる前提で気を配っておく必要があります。

冒頭で水槽は意外と重いと書きました。建物は1階より2階、2階より3階と、上に上るほど揺れが大きくなります。建物が大きく揺らされると、水槽も大きく揺らされます。重たい物は地面に近いほど揺らされにくく安定させやすくて安心です。

何はともあれ、水槽の設置は大きさにかかわらず1階が安心でベストでしょう。

既存住宅に大型水槽を置く場合の建物の補強について

建築基準法において居住の用途の建物の床組の構造計算をする場合は積載荷重として180kg/平方メートルを利用します。これは建物自体の重量とは別に家具など室内に置く物やそこで生活する人の重さを180kg/平方メートルは見込んでいるということです。

水に置き換えると水深18cm分しかありません。60cm規格水槽の高さが36cmですから、室内に水槽以外の荷物を一切置かなければ、6畳間の場合は3畳の大きさの水槽が置けます。2段で置く場合はさらに面積が半分になって1.5帖の大きさまで大丈夫ということになります。結構大きな水槽も置ける目安になりますが、水槽単品で考えるのではなく、構造的に区画された範囲(一般的には部屋の壁の内側)にある他の家具や人間の荷重も含まないといけません。ただ、計算上の積載荷重を超えると直ぐに建物が壊れるということはありません。

一般的な構造計算では、家具や人(積載荷重)を分散して配置する事を想定しています。大きな水槽やピアノのように1点に集中するような荷重としての安全性は検討されていません。必要に応じて別途行わないといけません。安全な重量の範囲であってもできるだけ面として分散させる工夫が必要です。細い4つ足の台は水槽台としては利用しないようにしてください。

90cm×45cm×45cm水槽なら、補強について要検討。90cm×60cm×60cm以上の水槽(というよりも水深が50cm以上の水槽)ならば、ほとんどの場合で補強が必要になるでしょう。

既存の住宅の補強は、単純にこうすれば良いという簡単な方法はありません。水槽を設置する床面の造り方やその床を支えるための梁の大きさやそのスパン(支点間の距離)の長さ、そしてその梁を支えている下階の柱の配置によって検討しないといけません。一般的にはピアノを設置する場合と同等の構造補強が必要になるでしょう。もちろん新築の場合は、荷重を検討して構造計算するので安心です。

床の補強について

床の補強の考え方について簡単に説明します。

水槽を消しゴムに、床を紙に置き換えて、紙の上に消しゴムを載せて持ち上げる事を考えてみます。

消しゴムを持ち上げるための紙がコピー用紙のように薄い紙だとふにゃふにゃでうまく上げられません。少し丈夫な厚紙だと安定して消しゴムを持ち上げることができます。このように、まずは面としての頑丈さが重要です。床の面としての頑丈さは、下地に使われる合板の厚みとその下の根太の大きさとピッチが関係します。

次に、消しゴムを持ち上げるための紙の大きさを考えてみます。名刺サイズの小さな紙だと消しゴムを載せても紙が大きく変形せず持ち上げ易いのですが、A4サイズの大きな紙では大きくたわみ上手く持ち上げられません。このように、いくら丈夫な床でもあまり大きな面積では水槽を支えることができません。そこで、床の下に梁や大引を配置して支える面積を小さくします。また、この梁が丈夫なほどたわみが小さくなるのでより重い水槽を支えられます。梁が大きい(特に背が高い)程、又は支える長さ(支点間)が短い程、梁の強度が増します。

さて、床と梁は大きな水槽を載せても大丈夫な程頑丈だとします。その面としての床と梁を支えるのが下の階の柱です。1階の床でしたら束(束柱)が支えています。単純に重さを支えるだけなら柱の本数だけ気にすればよいのです。しかし、上で述べたように梁は短く支えるほうが丈夫になります。ですから、梁の支点間(スパン)が長くなりすぎないように柱の位置を気にする必要があります。

あとは万が一地震で揺らされても折れないような寸法(柱の太さ)が必要です。柱の強さを考えやすいように、割りばしで例えてみます。長い箸だと手で簡単に折れますが、短い箸だとなかなか折れないと思います。このように、柱も短いほど強度が高くなります。

もし、木造住宅の3階に大きな水槽を置こうと思われているのでしたら、この上さらに検討が必要な項目があります。3階の床に掛かった荷重を支えているのは2階の柱です。その2階の柱全ての直下に1階の柱が位置していれば、この1階の柱の強度を気にするだけで済みます。しかし、もし1箇所でも2階の柱の直下に1階の柱がないとすると、1階の梁の上に2階の柱が乗っていることになります。そうなるとこの梁の強度を確認しなければなりません。その梁のサイズだけでなく、梁のスパン、その梁を支える1階の柱とさらに複雑になります。3階に大きな水槽を置くのはよほどのことがない限り無理だと思っていただいた方が良いでしょう。

このように重い水槽を支えるには、水槽のすぐ下の床面の強度、その面をできるだけ小さくするための梁の位置、その梁を効果的に支持する柱の位置の検討が必要です。広範囲にわたる要素を検討する必要があります。簡単にこうしておけば大丈夫という方法はありません。実際の状況に応じて対応が異なるので、大きな水槽を置かれる方は建築士や工務店などに相談されることをお薦めします。

給排水設備

水槽管理には、何よりも排水・給水設備が利用しやすいことが一番です。

水栓と排水口

換水作業の時、洗面所や浴室、キッチンなど最近の水栓はホースを取付けられないものが多くて困ります。

また、熱帯魚の一部やサンゴの飼育にはRO/DI浄水器を利用することがあります。蛇口に直結するので他のことに利用するには邪魔ですが、一々取り外すのも面倒です。

排水も近くに排水口があればホースで簡単に排水でき便利ですが、バケツで一々運んでいる方もいるかもしれません。

床仕上

換水時にはどうしても周囲を濡らしてしまうので、床壁の耐水性が高いほうが気が楽になります。そして汚れにくく掃除しやすければベストでしょう。


そこで、新築の際には

などを、準備してはいかがでしょう。

電気設備

コンセント

私はサンゴ飼育のリーフタンクをキープしています。60cm×45cm×45cmという小さな水槽にもかかわらず、それに必要なコンセントの数は

水槽を維持するために必要な機器と電力の例
照明:メタルハライド & タイマー150W
照明:蛍光灯 & タイマー18W×2
メインポンプ75W
水流用パワーヘッド8.5W
水流用パワーヘッド & タイマー7W
サーモスタット & ヒーター150W×2
クーラー177W
プロテインスキマー20W
カルシウムリアクター15W

の9箇所とずいぶん多いのです。これらに加え、換水時には別にポンプやヒーターを使ったりするので、さらに多く必要です。容量も大きくタコ足配線すると、とても危険です。容量を確認しながら6口タップ2本で対処しています。コンセントはできるだけ多めに用意したほうが良いでしょう。

設置場所は水槽のメンテナンスで水がかかる可能性のある場所は避けないといけません。既存の住宅などで水がかかる場所が避けられない場合は、電気工事の業者に言えば屋外用のカバーのついたコンセントに置き換えてもらうこともできます。

配線

必要なコンセント数だけでなく、その容量(W数)もとても大きく、注意が必要です。新築の場合にはブレーカーなど専用の配線を準備するのも良いでしょう。ブレーカーを別にしておくと、不意にブレーカーが落ちて水が溢れ出すといったトラブルも防げます。

漏電

海水を利用する場合は、特に水掛りや漏電には注意しないといけません。ボヤ騒ぎになった例があります。

埃と水掛りに配慮してコンセントの場所やカバーの検討が必要です。また、タップを床に直接置くと、万一水槽から水をあふれさせた場合漏電してしまいます。タップは水の掛からない高い場所に取付ましょう。

水槽用クーラー

上記の器具の中で問題なのが、水槽用クーラーです。飼育水を冷やす替わりに、温風を吹きだします。クーラーは屋外に設置し、配管を引き込んでくるのが一番です。1階で床下換気と床の断熱しだいでは、床下にクーラーを設置する方法もあります。

外壁貫通部にはクーラー用スリーブを設けておけば、配管の変更等も対応しやすくなります。

美観

新築の場合キャビネットを設計に盛り込んで、照明機器やその他の器具を隠して見た目良くする事ができます。試薬や餌などなにかと細かなもので雑然としがちですが棚を作って整理すれば、より心地良くアクアリウムが楽しめるでしょう。

全てを一体でコーディネートすれば水槽も立派なディスプレーになります。

水槽周囲を綺麗に整え専用の椅子やテーブルを用意して、ゆっくりと鑑賞してください。

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