1. ホーム
  2. すまいを考える
  3. 断熱性能から見た窓ガラスの種類と選び方

断熱性能から見た窓ガラスの種類と選び方

公開日:2022.06.10最終更新日:2022.10.28

当事務所の過去の事例の中で、標準的な規模の35坪の住宅の断熱性能を再計算して確かめてみました。壁・屋根等の外皮の総面積中、開口部の面積は9.4%でした。平成28年度省エネ基準をクリアするアルミサッシに複層ガラスの開口部の断熱仕様では、開口部からの貫流熱損失は51.4%にもなっていました。面積割合で10%の開口部から建物全体の50%の熱が逃げている計算です。断熱性能の向上のためには、開口部の断熱性能を上げる必要があります。その開口部で大きな面積を占めるのがガラスです。

窓ガラスの写真

窓ガラスの種類

単板ガラス

1枚のガラス板です。住宅用の窓ガラスは単板ガラスが一般的でしたが、2000年以降急速に複層ガラスが普及し、今ではペアガラス(複層ガラス)が一般的です。

複層ガラス

2枚のガラスの間に空気層(乾燥空気)を挟み、断熱効果を持たせたガラスです。空気層の厚みは6mmと12mmの2種類あり、12mmの方が断熱効果が高くなります。厚みが増すので溝幅の広いサッシ枠を選びます。

3枚のガラスで2つの空気層を挟んだトリプルガラスもあり、さらに断熱効果が高まります。しかしその分、厚みと重量も増加します。

この空気層の内部の気体を乾燥空気より断熱効果の高いアルゴンガスなどに置き換えて、より断熱効果を高めた複層ガラスもあります。

空気層の厚みをガラス周囲のスペーサーと呼ばれる部材で保持しています。なぜかこのスペーサーに熱伝導率の高いアルミが使われている複層ガラスが多くあります。複層ガラスの周囲で熱を伝えてしまい、せっかくの複層ガラスのメリットを活かしきれません。アルミサッシを利用するのでしたらアルミスペーサーでも問題ないかもしれませんが、樹脂サッシや木製サッシを利用する場合にはスペーサーの素材をよく確認して樹脂スペーサーを選んだ方が良いでしょう。

熱線反射ガラス

板ガラスの表面にごく薄い金属膜をコーティングし、赤外線を効率よく反射させ熱の侵入を抑える効果のあるガラスです。ごく薄くシルバー、ブロンズ、グリーン、ブルーに着色されています。半鏡面(ハーフミラー)状態で、外観上ガラスの色が気になりますので、色選びは施工会社に任せず建築主の主観で行う方が良いでしょう。また、ハーフミラーの状態は美観的な面から好みが分かれます。

Low-E複層ガラス

赤外線による影響(輻射熱・放射熱)を減少させるために特殊な金属膜を中空層の内部にコーディングした複層ガラスです。

室外側・室内側どちらのガラスにコーティングを施すかで特性が異なります。室外側のガラスの内面側にコーティングを施し効果的に太陽光の赤外線を減少させ遮熱を重視したものを遮熱高断熱複層ガラス、室内側のガラスの外部側にコーティングを施し室内からの熱流出を防ぎ断熱性を重視したものを高断熱複層ガラスと言います。遮熱タイプは夏場の暑さ対策を重視したガラスで、高断熱タイプは冬場の暖かさを重視したガラスですので目的に応じて選択することが重要です。

デメリットとしては高価なことと、熱線反射ガラスと同様金属膜のコーティングが施されていることによりガラスの色は無色透明ではなく、青・緑・グレーなどの色がつきます。外観の印象が大きく違って見えますので採用の際には大きな検討事項となります。

住まいを考える