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木造住宅の柱の種類と選び方

公開日:2023.06.14

「柱にどんな種類の木を使うか?」というのは木造住宅を新築する時にかならず話題となります。コストはたしかに重要ですがそれ以上に住まいの強度や耐久性はきっちりと確保しておかないといけません。

柱には樹種の違いだけでなく、昔からある「無垢材」と近年使われ始めた「集成材」といった違いもあります。様々なバリエーションがありますので、状況に応じた最もコストパフォーマンスの良い材料を選ぶ時の手がかりを紹介します。

柱が並ぶ木造住宅の写真

無垢材

無垢材は伐採した木を乾燥し製材したものです。

多くの樹種で丸太の中央部は赤や褐色を帯びています。「心材(赤身)」と呼ばれる部分で、水分が少なく有害な昆虫や微生物(菌・細菌)から身を守るための精油成分(フィトンチッド)を多く含み耐久性に優れます

心材の周囲に淡い色の「辺材(白太)」と呼ばれる部分があります。水分や養分が多くて柔らかいためシロアリの食害や腐りやすく取り扱いに注意が必要です。

心材と辺材の割合は樹種により異なります。また、心材と辺材の差が分かりにくい樹種もあります。

心材と辺材がよく分かる丸太

無垢材の強度やねじれなどの特性は植物の生物としての個体差がありますし、生育する地域や手入れのされ方によっても差が出ます。年輪の細かく入った(目の詰まった)材が見た目が美しいだけでなく強度が高く良材と言われます。一般的には寒い地域でゆっくり育つと細かく年輪が入り、逆に温かい地域では成長が早く年輪の間隔が広くなります。同様に、同じ産地でも斜面の南側か北側で日当たりなどの環境が異なり成長具合に違いが出ます。太い柱や梁などの大きな材が取れるほど大きな年輪の密な良い木が育つにはより多くの年月が必要で当然その分だけ貴重になりコストも大きくなります。

木は乾燥の過程で縮んだりネジレたりと変形します。よく乾燥させることで変形を予防することができます。また水分量の多い木はカビや腐朽菌が発生しやすいのですが、乾燥させ含水率を下げることでこれらを防止することができます。

天然(自然)乾燥と人工(強制)乾燥

乾燥材と呼ばれる木材の水分含有量(含水率)は20%以下となります。乾燥方法には、天然(自然)乾燥と人工乾燥があります。

天然乾燥(AD=Air Dry)は、風や太陽熱など自然環境を利用して木材を乾燥させます。天然乾燥で木の中心部までしっかりと乾かすには時間がかかります。多くは半年から1年以上必要で、梁などの大きな材や乾きにくい樹種だと数年かかることもあります。ゆっくりと木材にストレスをかけずに乾燥させるので防虫防腐効果のある油分・フィトンチッドを多く残せます

乾燥させる間は木の個性に応じて様子を見ながらそれぞれ個別に扱う必要があるため時間だけでなく手間もかかります。きちんと乾燥させると建材として理想的な木材となります。

人工乾燥(KD=Kiln Dry)は専用の機械を用いて強制的に木材を乾燥します。時間のかかる天然乾燥と違い早くムラを少なく乾燥させることができるのがメリットです。ボイラーの熱で高温の蒸気を発生させて木材を乾燥させる方法が一般的です。人工乾燥には、低温、中温、高温と利用する温度毎に種類があり、最短で3日ほど、長ければ1ヶ月ほどかけて乾燥させます。

低温乾燥
35度~60度でゆっくり乾燥します。乾燥後の水分や油分のバランスが良く、木の色、艶や芳香を維持しやすいのが特徴です。乾燥による内部割れや変色を抑えることができます。ただし日数がかかります。
中温乾燥
60度~80度程度で乾燥し、低温乾燥よりも乾燥時間を短縮できます。内部割れは起こしにくい一方で、低温乾燥に比べて木の色、艶は損なわれます。
高温乾燥
90度~120度で乾燥します。最も短時間で木材を乾燥させます。高温で乾燥させるため木の細胞組織が破壊され、水分だけでなく油分も揮発してしまいパサついた仕上がりとなります。精油成分が飛びますので芳香だけでなく防虫防腐効果も失います。また色、艶は大きく損なわれてしまいます。内部割れが大きく場合によっては強度が低下してしまうことがあります。

人工乾燥は木に人為的に熱を加えることから様々な悪影響があります。材の表面は綺麗なまま木材内部に割れを生じ強度が低下する内部割れという現象が見られます。次に、水分と同時に精油成分も揮発していしまい、木材の良い香りを失うだけでなく防虫防腐効果、耐久性を失います。これらは外見からは判別できないので問題です。外見では木の色が焦げたように変色し油分と同時に艶も損なわれます

乾燥に用いる温度が高いほど早く乾燥できますが、同時に温度が高いほど悪影響が出やすくなります。特に高温で乾燥させるときに起こしやすいのですが、過乾燥は木材の強度と耐用年数を大幅に減らします

集成材

集成材は板材または角材に小さく切り分けた木片を乾燥させ繊維の方向を揃えて接着剤で貼り合わせて作ります。小さく切り分けるため材の内部までしっかりと乾燥することができます。また、大きな節や割れなどの傷のある部分を取り除く事ができます。木材の欠陥を減らすことで強度の低下を防げます。また、複数の木材を貼り合わせることで個体差を解消し強度が均一化されます。

集成材の柱

無垢の木は”中心部と外周部”や”木の根元と先端部”で硬さや(乾燥する過程で)収縮率などの性質が異なるので反ったり曲がったりしますが、集成材はこれらの性質を打ち消し合うように貼り合わせることで反り、曲がり、収縮といった変形を起こしにくくします。柱の変形で問題になるのは内部仕上げへの影響です。ビニルクロスはボードの継ぎ目で切れ目が入りますし、左官仕上げはヒビが入ったりします。無垢材の場合は木の癖を読む職人の目利きや、石膏ボード下地の作り方などの高い施工技術で防ぐ必要があるのですが、ほとんど狂いの出ない集成材を使うと下地づくりなどの施工が格段に容易になるため施工業者には特にこの点が歓迎されます。

切り分けた木材を厚さ、幅及び長さ方向に接着して無垢材では取れない幅広い厚板や大断面材、長尺材を作ることができます。

集成材はその製法上、接着剤の性能に大きく依存しています。接着剤の劣化はそのまま構造的な性能の劣化に繋がります。接着剤が劣化して剥離すれば木材としての強度は保てませんし、最悪の場合ばらばらになる可能性があります。接着剤の寿命が即集成材としての寿命です。実際に利用開始されてからまだ100年ほど、日本では普及しだしてまだ数十年ほどの実績しかありません。一般的には、きちんと作られて湿気にさらされなければ50年~70年以上の耐用年数があると言われています。

集成材に使われる接着剤

集成材で主に使用される接着剤は、イソシアネート系接着剤とレゾルシノール系接着剤の2種類あります。レゾルシノール系接着剤は接着能力が高い上に耐久性、候性に優れ、比較的信頼性の高い接着剤です。一方のイソシアネート系接着剤は初期性能や良好な環境下ではレゾルシノール系接着剤とほぼ同等となりますが、耐水性能が悪く高湿度下で放置すると接着層で剥離しやすくなることが確認されています。過去には実際に水濡れや湿気により接着剤が劣化し剥がれてしまった事例があります。

レゾルシノール系接着剤は褐色で接着部分にくっきりと黒い線が見えてしまいますが、イソシアネート系接着剤は白色若しくは無色で材がきれいに仕上がります。それに加えて、イソシアネート系接着剤はレゾルシノール系接着剤を使うよりも遥かに安いこともあり、市場で出回る集成材の殆どがイソシアネート系接着剤を用いたものです。

柱に使われる樹種

建築分野では、できるだけ反ったり捻れたりという狂いが少なく長い木材が求められます。そのためにはできるだけ幹が真ん丸で真っ直ぐに高く育つ木が理想です。

針葉樹のなかでも杉・檜は真っ直ぐに高く育ち木材として利用しやすく、国内で広く植林されています。杉の植林は日本全国にされてますが特に東北地域に多く見られます。一方の檜は北海道を含む東北地方以北には分布していないようで九州・四国・西日本を中心に分布しています。そのため西日本では杉よりも檜が主に流通していますが、東日本では杉が主に流通しているそうです。

一般的に広葉樹は太く短い幹から先が分かれるように大きな枝を広く伸ばして育つものが多く、長尺材が確保しにくく捩れなどの狂いが出ます。柱や梁といった構造部材への利用はあまり見られず、一部で栗が土台として欅(けやき)が大黒柱として使われています。魅力的な木目を持つ樹種が多く、フローリングや家具の材料として利用されます。

杉は日本固有種ですが、日本全土に植林され非常にポピュラーな木です。辺材は白く心材は赤ですが黒みがかったものも多くあります。辺材と心材の色の差がはっきりしています。成長が早く利用しやすいこともあり流通量が多く、柱材としての性能も高く、コストパフォマンスからはまっさきにおすすめできる樹種です。

柱としての強度も十分な上、防虫防腐効果のある精油成分を多く含み耐久性が高く、耐蟻性にもとても優れ建築部材としてとても優れた樹種です。スギと比べ成長が遅く年輪の幅が細かく目が詰まっておりその分強度があります。西日本では杉よりも流通量が多いため、コストパフォーんマンスにも優れ真っ先に檜がおすすめの柱材としてあげられます。檜の辺材は黄色みを帯びた白で、心材はピンクがかっています。

ホワイトウッド

一般的に北欧産のドイツトウヒ、ヨーロッパスプルース、ノルウェイスプルースなどいくつかの樹種を「ホワイトウッド」と言っています。樹高は60~50m、直径60~100cmにもなる大木です。強度は杉と同等若しくは若干杉よりも強いようです。大径木を大量に輸入することで安価に供給されるようです。

寒冷で乾燥しシロアリが生息していない土地で育つ木ですので、腐朽菌やシロアリへの耐性が極度に低く耐久性に劣ります。柱としての利用には高湿度の環境下に長くさらされないよう、内部結露だけでなく屋根・外壁からの雨漏りがないように完璧な処置が必要です。ただ、これはどの樹種にも当てはまりますが、ホワイトウッドの場合は被害の進行度合いが速いので万が一の時は早々に発見できないと手遅れになりやすいと言うことです。防腐防蟻処置に薬剤が利用されますが、人への影響を考慮し強い薬剤の利用が避けられていますので薬剤の保証期間は5年ほどとかなり短い期間ですので耐久性を補えるものではありません。

柱材に何を選ぶか?

30~50年の耐用年数を目安に、高湿度下に長くさらさない(確実な内部結露対策、定期的な外壁のメンテナンスなど)ことを前提にすると、柱材に杉や檜の無垢材、ホワイトウッドの集成材など一般的に広く流通している材ならどれを選んでも問題はありません

無垢材の品質のばらつきを避ける、木材の強度を重視する場合

無垢材の品質のばらつきを避けたかったり木材の強度を重視する場合には、機械によりヤング係数を測定し等級区分した日本農林水産規格(JAS)の機械等級区分の認証材を利用すると良いでしょう。JAS認証材には含水率および強度が表示されています。構造に用いる集成材は全てJAS認証材です。ごくごく一部ですがJAS認証の無垢材も流通しています。

杉、桧などで無垢のJAS認証材があります。ただ、流通量が極めて少ないため大規模なハウスメーカーでは採用できないでしょう。需要を高めて供給量を増やしてもらいたいところです。

集成材は、ホワイトウッドだけでなく、輸入材では欧州アカマツ(レッドウッド・レッドパイン)も作られています。国産材では、杉、桧が無垢材だけでなく集成材もあります。集成材のメリットを活かすのであれば、耐腐朽性・耐シロアリ性で非常に劣るホワイトウッドを使わなくてもより強度のある欧州アカマツの集成材や耐久性・防蟻性に優れる杉、桧の集成材を採用すると良いのでないでしょうか。いずれもホワイトウッドと比べるとコストアップします。

無垢の柱の強度のむらを問題視しつつ強度表示されていることを安全として集成材が多く薦められる一方、実際に柱にかかる荷重を計算し安全性を検証する構造計算はほとんど行われていません。日本国内で木造住宅の構造計算が行われているのは20%に満たないそうです。強度を気にして柱を選んでも、それで大丈夫なのかは確認されていません。建築基準法を満たしていても別途構造計算を行わないと実際に柱に掛かる荷重の計算と安全性の検証はされませんので注意が必要です。

木造住宅の構造計算について

建築基準法(確認申請)では一般的な規模の木造住宅の構造計算を義務化していません。建築基準法で木造住宅の構造の検討に求めているのは、壁量計算とN値計算です。壁量計算は、床面積、重い屋根材かそれ以外か、建物階数によって地震や風の力に抵抗するのに必要な耐力壁の量(長さ)を計算します。N値計算は耐力壁を構成する柱を引き抜こうとする力の大きさを計算し、柱の固定に用いる金物を選定します。どちらにも実際に柱にかかる荷重の計算やそれによる安全性の検証は含まれていません

また、木造住宅の構造に関する内容は設計する建築士に一任されており、建築確認に構造に関する書類の添付は不要で行政(審査機関)による構造に関するチェックはありません。四号特例と言いますが、この特例は廃止が決まっており2025(令和7)年4月に施行予定になっています。構造に関して行政を含む第三者によるチェックがありませんので、設計側(設計施工のハウスメーカー・工務店を含む)に悪意があれば構造的検討を一切行わずとも確認申請は通ってしまいます。

建築基準法の適合をもって構造の安全性を保証するものではありません。四号特例が廃止されたとしても実際に柱にかかる荷重の計算やそれによる安全性の検証はされませんので同じです。

構造計算(許容応力度計算)を行うと地震や台風時に建物にかかる水平力の検証に加え、建物の自重や荷重の鉛直力に対して全ての柱や梁の検証、建物の安全性を確かめることができます。

とにかく安く建てたい場合

とにかく一円でも安く安く建てたいという場合は、ホワイトウッドの集成材になろうかと思います。カビ、腐朽菌、シロアリに弱いと言った問題はありますが、安定した品質で安く入手できます。集成材は施工上の取り扱いが容易で手間がかからず、材料費以外に施工面でもコストを抑えられます

ただ、安く建てる場合にありがちなのが、職人の技術が低く施工精度が落ちたり低品質の建材を用いることで、内部結露を引き起こしたり外壁からの漏水があったりした場合は30年保たずにあっという間に柱を腐らせてしまいます。職人の経験や技術、建材の品質など必要な所にはしっかりとコストをかけて施工品質を確保する必要があります。安価な外壁の仕上材やシーリング材は7~10年程度でのメンテナンスが必要になります。住まい始めてからの維持管理をしっかりと行う必要があります。

柱の見える家を作る、無垢材にこだわりたい

自然素材の家造りをテーマにすると、構造材も無垢材の中から選ぶこととなります。東日本では杉、西日本では桧の低温~中温での機械乾燥材が品質が安定しており入手が容易で最もコストパフォーマンスに優れています。無垢の柱の定番です。

現在のところ入手性に難がありますが、人と違った木で家を建ててみたかったり、柱を現しで仕上げるので気に入る木目の木を探したいという方に柱に使えるオススメの樹種をいくつか紹介します。

生産地が限られており入手性に難がありますがヒバもおすすめできます。シロアリに対する強さは他の樹種に比べて一段上です。その上腐りにくく、耐水性があり湿気に強く耐久性があります。強度も桧と同等でとても良い木なのですが、成長が遅いこともあってか生産量が少なくコストが掛かります。

近年普及し始めているのがカラマツです。マツの仲間ですが、地松(赤松・黒松)と違って真っ直ぐ天に向かって育ちます。ただ、捻れながら成長するので、板材などでは割れ狂い捻れが出やすく使いにくかったそうです。乾燥・加工技術が進歩し構造材として見直されてきています。硬い木で強度は高く、松脂で知られるように脂気を多く含むため腐りにくく耐久性があります。木目は細かくくっきりとして力強い印象です。経年変化が見られ、肌色っぽいベージュから次第に赤みの強い渋い褐色に変化します。多い脂気のために美しい艶が出てきます。桧と比べ若干コストが高いようです。

無垢材は個性引き立つ美しい木目と色艶が増していく経年変化が特徴です。柱が見える真壁づくりの住まいをぜひ検討してみてください。無垢の木の持つ吸放湿性能も発揮させることができます。また、万が一の漏水などのトラブルの際にも早く気づくことができるでしょう。

数百年使い続けられる家を建てたい場合(無垢材を利用する場合)

江戸時代からある古民家のように100年~200年もしくはそれ以上使い続けられる住宅をお望みでしたら、無垢材一択です。杉、檜、ヒバなどの耐久性の高い樹種で心持ち赤身材を選びます。しっかりと管理された天然乾燥材を選びます。(高温乾燥のKD材は絶対に避けます。)

ただし、日頃から無垢材を使い慣れた熟練の大工を抱えている施工業者に依頼する必要があります。通常は集成材の家を建てている施工業者に、オプション的に無垢材での施工を依頼すると多分うまくいきません。ハウスメーカーや工務店は材料取りから柱梁の加工などまでプレカットにお任せのはずです。天然乾燥の無垢材は背割りのこともありますし、材ごとのクセを読みどこに配置するかだけでなく材の向きまで気配りが必要ですので、プレカットの時点で無垢材を取り扱う職人の技術が必要です。普段から無垢材を取り扱う施工業者ならば、無垢材の取り扱いに慣れたプレカットと取り引きしているでしょう。若しくは、経験豊かな大工職人(棟梁)に任せるはずです。また、下地作りの段階等様々な工程でのちのちトラブルを防ぐ工夫を施す必要があり、工事全体を通じて無垢の取扱いに関する経験と豊富な知識が必要です。天然乾燥の無垢材は棟梁が材料の手配から木取り、加工も行うのがベストです

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