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屋根材の種類と選び方

公開日:2012.06.29最終更新日:2018.09.10

屋根の形、屋根材(葺き材)の色や素材感は建物の雰囲気に大きな影響を与えます。和風・洋風のイメージは外壁の素材よりも屋根の傾斜などの形や屋根材の色・素材感によるところが大きいのではないでしょうか。

屋根の写真

屋根は日差しや雨風から建物を守っています。万が一近隣で火災が起きた場合は、飛び火が燃え移らないように火災からも建物を守ります。特殊な場合を除き一般的には吸水性が少なく燃えない材料(不燃材)で造られます。

屋根は建物の最上部にあるので、その重量は地震時に建物に大きな影響を与えます。屋根材の重量は耐震性の確保の面で重要な項目です。耐震性の確保のために必要なのが耐力壁です。屋根が軽いほど耐力壁が少なくて済み、開放的な空間を造りやすくなります。一方、重い屋根にもメリットがあり、屋根材が重いほど遮音性に優れます。軽量なものは遮音性が低い傾向があり、音(特に雨音)への対策が必要です。

屋根材は見た目の雰囲気で選ばれがちですが、屋根は高い場所で目が届きにくく気軽にメンテナンスできない事を考えると耐久性やメンテナンス性を重視する必要があります。非常に耐久性の高い屋根材はありますが、残念ながらメンテナンスフリーの完璧な屋根材はありません。

木造住宅で一般的に使われる屋根材は次のような物があります。ベランダやバルコニーなどフラットな場所に使われる防水工法に関しての記述は省きます。

屋根材の種類

粘土瓦

瓦は粘土を成形し高温で焼き上げたものです。表面にガラス質の釉薬が塗られた釉薬瓦と、薬を塗らず焼いた無釉瓦やいぶし瓦があります。原料が粘土なので重量があります。耐震性の確保の面では不利ですが、重い分だけ遮音性に優れており雨音が気になりにくいのは利点です。

瓦の耐久性は非常に高く、瓦を葺いた屋根は数十年の期間放置できます。ただ、強い台風のような時に強風のため雨水が瓦表面を逆流し瓦裏に水が漏れてしまう事があります。ルーフィングと言って瓦裏に回った雨水を流す補助的な部材が下地の表面にあるので多少の漏水は問題ありませんが、数十年と言ったスパンで見ると徐々に下地が傷みます。一見瓦自体に問題は無くても、下地が劣化している可能性があるので定期的なチェックは必要です。また、強風や飛来物で瓦がずれたり剥がれたりしてそこから漏水してしまうことがあります。その場合はトラブルのあった箇所の部分的な修繕で済みますが、念のため周囲も含め下地などをチェックする方が良いでしょう。

瓦の内部に水が浸透してしまうと冬季凍った時に膨張して瓦を壊す可能性があります。吸水性の高い瓦は寒冷地では使えません。良質な粘土の使用やより高温で焼き固めることで吸水率を抑え、かつては寒冷地ではトラブルの多かった瓦も最近では問題なく使えるようになっています。

自由に成形できる瓦には和風のJ型(和型)・F形(平板)・洋風のS形などがありますので、建物の雰囲気に合わせて好みのデザインが選べます。

瓦が作る街並み

北欧の風景写真でよく見る外壁と瓦の色が綺麗に揃った町並みは本当にきれいです。同じような風景が日本にもまだまだあります。伝統的に瓦の色がまとまった地域ではその色の瓦が一番映えます。

私個人的には最近の街並みや景観(特に田園風景)の乱れが気になっています。好きな色を自由に使うのは避けて、景観にも気配りしていきたいと思います。

釉薬瓦(陶器瓦)

青い釉薬瓦屋根の写真

ガラス質の釉薬(うわぐすり・ゆうやく)は種類も多く、カラーバリエーションが豊富です。ガラス質の釉薬のおかげで水の浸透がないため凍害に強く、またほとんど劣化しません。塗装していませんから塗り直しのメンテナンスがありません。退色・変色はほとんどありませんし汚れも付きにくいので、長期にわたり美観が保てます。数百年も前の古い焼き物の茶碗が当時そのままの姿で残っており、未だに使えるのがその耐久性の高さを証明しています。

釉薬瓦自体の耐用年数は半永久的です。瓦屋根としての耐用年数は50~100年以上はあるでしょう。100年もてば一般的にはメンテナンスフリーと言っても良いのではと思われるかもしれませんが、残念ながらメンテナンスフリーではありません。屋根瓦自体に問題は無くても、できれば15~20年おきに屋根葺き下地の劣化の確認を行ってください。

無釉瓦

釉薬(うわぐすり・ゆうやく)をかけず焼いた瓦です。素地そのまま焼き上げてあり、塗装などの表面処理が施されていません。

素焼き瓦は、スペインやフランスなどのヨーロッパのスペイン瓦・テラコッタ瓦や沖縄の赤瓦が有名です。焼き上げる際に窯の中での位置や炎の状況による温度差などで独特の色味を出した窯変瓦があります。

釉薬瓦と違い表面のガラス質のコーディングがない分、汚れが付着しやすくなります。ついた汚れから劣化が始まり、釉薬瓦より寿命は短くなります。テラコッタなど表面のざらつきが大きい瓦は余計に汚れが付きやすく、耐久性もその分劣ります。また、吸水性のある瓦は耐久性に劣ります。耐久性は非常に高く、耐用年数は40~50年ほどです。

いぶし瓦

写真:いぶし瓦

いぶし瓦は、焼き上げる工程で燻して表面に炭素膜を形成させた瓦です。この炭素膜が、水を弾いて瓦を保護しています。雨に打たれるなどで炭素膜が剥離劣化してしまいます。

均一な被膜をうまく焼き付けられなかった昔のいぶし瓦では、屋根全体が均一に色落ちせずムラを生じることがありました。耐久性は非常に高く、耐用年数は40~50年ほどでしょうか。ちなみに、45年ぶりに本格修理が行われている姫路城では、屋根を全面葺き直しするものの瓦は再利用するとの事で瓦自体の寿命は実際にはもっと長いようです。

和型のいぶし瓦は和の住宅の必須アイテムです。

住まいを考える

スレート系

もともとスレートとは粘板岩を薄く板状に加工した天然石の屋根葺き材です。このスレートを模して、繊維を練りこんだセメントを用いて人工的に作られたものが化粧石綿スレートです。

化粧石綿スレート

写真:化粧石綿スレート葺きの屋根

繊維材料を混ぜ込んだセメントを成形した板状の合成スレートの表面に塗装を施した物です。厚さ約5mmほどで薄型軽量のため耐震性能確保の面で有利です。主原料がセメントのため価格も安く、ハウスメーカー系の住宅では主流の屋根材です。カラーベストやコロニアルとも呼ばれています。

塗膜が劣化するとスレート自体が水を吸い早々に劣化します。7~10年程度を目安に塗り替えが必要な商品が一般的です。塗装に対して長期の保証がついているものでも10年ほどです。こまめに適切なメンテナンスをしても、屋根葺き材として30年ほどの耐用年数でしょう。

かつてはスレートの薄板状の物だけでしたが、最近は和型瓦や平板瓦を模したボリュームのある商品もあります。

メンテナンスに難があるようです

屋根の工事職人さんに良く聞く話では、塗膜が劣化しても放置された化粧スレートが水を含んで脆くなり上を歩くと壊れてしまう事が多いそうです。再塗装をするにも屋根の上を歩けませんからメンテナンスができません。無理に塗り直して化粧スレートを割ると、漏水を招きます。

また、現場で施工できる塗料の耐候性・耐久性は低く、塗り直しのあとまた再度7~10年ほどの短い期間で再塗装が必要になります。頻繁な化粧石綿スレートのメンテナンスを解消するために、既存の屋根の上から金属板で屋根を葺き直すカバー工法によるリフォームが多く採用されています。

30~50年程度放置できない屋根材は、最初から採用を避けるべきです。個人的には化粧石綿スレートはお薦めしません。ローコストでという理由なら後で述べるガルバリウム鋼板の瓦棒葺きなどが良さそうです。

天然スレート

粘板岩(主に玄昌石)をうすく板状に加工した屋根材です。元が石なので重量があり、耐震性の確保に配慮が必要です。石材なので吸水性も低く汚れにも強く、耐久性が非常に高いのがメリットです。

天然素材ですので1枚1枚表情が異なります。自然の醸し出すムラ感・素材感は非常に魅力的です。

高価な材料のためほとんど見かけません。当事務所では設計や施工での採用実績がありません。

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金属系

ごく薄い金属板を様々な形状に加工して屋根を葺きます。長方形の板を咬み合わせて吹き上げる平葺きと軒先から棟まで届く長尺の板を並べて葺く瓦棒葺き・竪ハゼ葺きが主な葺き方です。特に平葺きは曲面にも葺くことができ、適応範囲がかなり広い葺き方です。

金属系の屋根材は、軽量で建物の構造的負担が小さい事、運搬しやすく施工性が良いことなどのメリットがあります。

金属は熱伝導率が良いため断熱性が悪いこと、硬く薄いため遮音性に欠けるなどの欠点があります。下地や小屋組、天井などを含んだ屋根周辺部分できちんと断熱性や遮音性を補う必要があります。

屋根材として、銅板や鉄を基材とするガルバリウム鋼板がよく利用されています。アルミやステンレスなども屋根材として商品化されていますが、かなり高価なこともありあまり見かけません。

銅板

古代から人類が利用してきた金属が銅です。日本でも古くから利用され、建物では屋根材だけでなく樋が造られたり柱の根元や梁の端部を覆ったりと様々に利用されています。

新品はピカピカの赤銅色をしてますが、空気中の酸素、二酸化炭素と水分に反応して緑青(ろくしょう)という錆が表面に被膜を作ります。この緑青の被膜には内部への腐食を防ぐ効果がありそれ以上錆が進まず耐久性を高めます。

耐久性は金属板の厚みによりますが50年以上は安心して使えるようです。使用する銅板の厚みや異種金属が接触しないよう周辺部材を吟味し、工法等細部まで配慮することにより耐久性を高め、耐用年数を100年以上確保することも可能です。

銅板といぶし瓦との相性は?

「銅はいぶし瓦との相性が悪く、早々に銅板に穴が開く」という記述を稀に見かけます。いぶし瓦と銅がどのように作用して寿命が縮まるのかが科学的に分からず、真偽のほどが判断できません。どちらも「和」のイメージで馴染みがよさそうなだけに、もし相性が悪いのであれば残念です。

ただ、姫路城の平成の大修理を見学してきましたが、谷樋として銅板を利用しているのを見かけました。私個人的には異種金属の接触による腐食など他に原因があり銅といぶしとの相性は問題ないのではと思っていますが、気になる方は、併せて利用するのは避けた方が良いでしょう。

緑青で覆われた銅は腐食に強く耐久性が非常に高いため、防錆や耐候性を高めるための塗装が必要ありません。無塗装なので塗り直のメンテナンスの必要がなく基本的に放置できます。新品のキラキラ光る銅の色が気になる場合には、緑青色や黒い硫化銅色に塗装したり酸化処理で変色させた銅板が用意されています。塗膜が劣化して剥がれ落ちる頃には自然な緑青が発生しているのが前提ですので、こちらも塗膜劣化による塗り直しは行いません。

銅板の上を流れる雨水に銅イオンが含まれるため、流れる部分を緑青に染めます。銅板葺きの屋根や銅板の雨樋を用いた住宅では、排水の対策が必要です。特にモルタルやコンクリートにくっきりと色が付きやすく雨だれ跡が緑青色に染まっているのを見かけます。

銅の価格が相場に左右されるので時価的な面がありますが、かなり高価な屋根材です。

(カラー)ガルバリウム鋼板

写真:カラーガルバリウム鋼板瓦棒葺きの屋根

アルミニウム、亜鉛、シリコンからなるメッキ層を施した鋼板がガルバリウム鋼板で、メッキ層に含まれるアルミの耐食性と亜鉛の防食作用のため高い耐久性を有しています

金属質を活かした素地のままでも利用されていますが、表面に塗装を施したカラーガルバリウム鋼板が良く利用されています。

開発メーカーの実験では、メッキ被膜の寿命は塩害地域で約15年、工業都市や田園地帯で約25年以上持つことが確認されています。カラーガルバリウムも対候性の高いフッ素樹脂塗料を用い、塗膜に対して10~15年のメーカー保証が付いている商品が多いようです。耐久性は高く、耐用年数は20~30年ほどです。

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