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断熱材を選ぶ時の基礎知識

公開日:2012.07.12

住宅の断熱材は、室内と外部との間の熱を流れにくくします。断熱の効果が高ければ、冷暖房の効率が良くなりエネルギー消費を抑えることができます。

断熱材が施工された室内

住宅の完成時には断熱材は隠れて見えなくなります。後々断熱材を修繕するのも非常に困難ですから慎重に選定する必要があります。断熱材を考える時、断熱性能とコストだけでなく、耐久性、耐火性、防蟻性などが検討事項にあげられます。最近では、原材料・リサイクル性、製造に必要なエネルギーなどエコ・環境面への影響も気にするようになりました。

住まいを長く(できれば100年以上)使い続ける事を考えると、断熱材の耐久性は特に重要です。素材そのものの耐久性だけでなく、痩せといった変形や沈下等の経年変化がないか、ごく小さいこと、白アリの被害を受けない事(防蟻性)、内部結露が起こらないもしくは内部結露させないことが重要です。

断熱効果を発揮する仕組み

断熱材の原理は、熱を伝えにくい空気を動かないように固定し、熱が移動しないようにすることです。空気は大きな範囲で密閉してもその内部で対流し熱を伝えます。熱い空気は熱いまま、冷たい空気は冷たいまま動かず混ざり合わないことが重要です。また、極小さな領域で閉じ込めたとしても、閉じ込めた空気の量より閉じ込めるために用いた物質の量が多いとその物質自体が熱を伝導して伝えます。断熱材は、少ない材料で多量の空気をできるだけ小さく閉じ込めることが重要です。

その空気の閉じ込め方により大きく繊維系断熱材と発泡樹脂系断熱材に分類されます。

繊維系断熱材とは
ごく細い繊維を集めてその繊維と繊維の間に溜めこんだ空気を動かないように密集させたものです。使われる繊維によってさまざまな種類があります。
発泡樹脂系断熱材とは
プラスチック樹脂を極微細な気泡を含む形で固めたものです。製造方法や材料などで気泡が独立したもの、連続したものや、発泡させるのに空気以外の断熱性能の高いガスを用いたものなどさまざまな種類があります。

断熱材の性能を比較するための熱伝導率と熱抵抗値

熱伝導率はある物質の熱の伝わり易さを示す数値で、小さいほど熱が伝わりにくい事を意味します。その物質がもつ性質・性能を表す値です。熱伝導率の単位は(W/m・k)で、厚さ1mの板状の材料の両面に1℃の温度差がある時にその板1m2の面積あたりに1時間に伝わる熱量を表しています。

熱抵抗値は、ある厚みの時の物質の熱の伝わりにくさを表す値です。大きいほど熱が伝わりにくく、断熱性能が高いことを表します。熱抵抗値は、厚み(m)を熱伝導率(W/m・k)で割った数値(熱抵抗値=厚み÷熱伝導率)で、単位は(m2・K/W)です。ある厚みの時の数値なので、同じ物質でしたら厚みが2倍になれば熱抵抗値も2倍になります。

断熱材の宣伝文句で熱伝導率の小ささを比較して○○より高性能(高い断熱性)と表現しているのを見かけます。断熱材としての断熱性能を比較する場合はこの表現は不適切です。薄い熱伝導率の小さい高性能な断熱材が分厚い熱伝導率の大きな断熱材に熱抵抗値(断熱性能)で劣ることもあります。

熱伝導率が小さいということは薄い断熱材で基準を満たすことができるという意味で、断熱材の優劣を表すものではありません。当然同じ厚みで比較すれば、熱伝導率が小さく高性能と言われる断熱材の方が断熱効果は高くなります。だからと言って、グラスウール16k品100mm(熱抵抗値:2.2)の代わりに、押出法ポリスチレンフォーム3種の厚み100mm(熱抵抗値:3.57)を使ったりはしないでしょう。2.2程度の熱抵抗値が必要な箇所でしたら厚み65mm(熱抵抗値:2.32)を使うことになります。

必要な断熱性能に対して、必要な厚みの断熱材を利用すればよいので、「○○より断熱性能が高い」という宣伝文句は気にしなくてかまいません。断熱材が入れられる厚みが限られた場所の断熱性能をできるだけ高くしたいとか、できるけ薄い断熱層を作りたいとかいう場合に熱伝導率が小さい高性能な断熱材を利用します。

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内部結露

暖かい空気がとても冷たい物に触れると、空気中の湿気が物の表面で水滴となります。これが結露で、冬場暖かいリビングの窓ガラスに水滴がつくのを良く見かけます。(複層ガラスが一般的になりガラスの結露はずいぶん減りました。)ガラスや壁の表面など見える部分で結露が起こる分にはまだ気づくことができますし、何らかの対策が施せます。この結露が壁の内部でおこるのが内部結露です。壁の内部なだけに簡単に見ることができず、内部結露の有無を確認するのはとても困難です。

水は空気より20倍も熱を伝えやすく、内部結露により空気の層が水に置き換わってしまうと断熱性能が低下します。それだけでなく、壁体内が湿潤状態にあるとカビの発生やダニやシロアリ、腐朽菌を呼び寄せ、結果土台や柱などの主要構造部を腐らせてしまい建物に重大なダメージを与えます

どの断熱材でもそうですが、施工方法に誤りがあると断熱性能を正しく発揮できないだけでなく結露を招く可能性があります。上で述べたように暖かい空気が冷たいものに触れると結露が起こります。断熱層に欠損があると、屋外の冷気にさらされた冷たい壁体周囲の空気を室内から熱が伝わり温めることで結露が起こります

断熱材の入っていない空隙を作らないようにきっちりと断熱材を施工することが重要です。また、垂れるといった経年変化による空隙を生じないようにしないといけません。さらに壁の上下の隙間をなくし床下と天井との間の空気の移動をなくす(気流止め)ことが重要です。

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どの断熱材が良いのか

次世代省エネ基準などで求められる断熱性能は、一般的に普及している断熱材であればどれを用いても達成可能です。また、多種多様な断熱材にはそれぞれさまざまな特徴がありどれも一長一短です。残念ながらすべてに秀でるベストな断熱材はありません

断熱材の種類と特徴

断熱材の選択は各々の価値観に基づき検討し、何を重視するかで決めて良いと思います。

きちんとした断熱性能を確保するには特定の断熱材にこだわるよりも、住まい方等の各要求や施工部位などから適材適所で断熱材を選定し、防湿・気密・気流止めを含む丁寧で確実な施工の方がより重要です。

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