外壁材の種類と選び方
公開日:2012.07.25最終更新日:2018.09.21
屋根と併せて外観に大きな影響を与えるのが外壁です。イメージ通りの住まいを造るためには、色だけでなく質感や素材感が重要です。
外壁は雨風だけでなく紫外線にもさらされ続け、過酷な状況にあります。特に、耐久性・耐候性の高い外壁が求められます。外壁を劣化させ雨を染み込ませてしまうと、外壁だけでなく内部の主要構造体を傷めてしまうので、屋根と共に外壁のメンテナンスは非常に重要です。紫外線の漂白作用は結構強く、塗装品の場合は耐候性の高いものでないと短期間で退色してしまいます。
メンテナンスフリーの外壁はありませんが、メンテナンスの手間が少ない外壁はあります。外壁でメンテナンスが必要となるのは、塗装品の「塗膜」と目地に詰める「シーリング材」、ラスモルタル下地などに生じる「クラック」です。塗装品を用いずに、なおかつできるだけ目地が少ない外壁だとメンテナンスが少なくて済みます。クラックについては、割れないしっかりとした下地を造る以外に対処がありません。
外壁の再塗装などのメンテナンスには、足場が必要です。この足場を組むだけでも数十万円はかかり、改修の予算の中で結構なウェイトを占めてしまいます。建てるための予算を節約して安い外壁材を用いると後々大きな改修費が必要となり、トータルで見ると損をしてしまいます。外壁をこまめに塗り替えてリフレッシュを楽しむという方は別ですが、外観のイメージを重視しつつ後々のメンテナンスが少なくなるように可能な限り高耐久・高耐候性の外壁をおすすめします。
外壁材の種類
窯業系サイディング
セメント質と繊維質を混合して押し出し成形したものの表面に塗装を施したものです。軽量で構造的負担が小さく施工性が良い外壁材です。
成形の際のパネル表面の表情と着色により、かなりバリエーション豊富な中から好みのデザインを選ぶことができます。安価で、良く利用されています。
パネルの基材は吸水性があり、防水性能は塗膜に頼っています。塗膜の劣化は美観が悪いだけでなく、パネルに水を染み込ませてしまうと波打つことがあります。塗膜やシーリング材が傷んだまま放置すると、漏水し建物の構造に大きなダメージを与える可能性があります。寒冷地では吸った水が氷る際に膨張しパネルを壊してしまうことがあります。
一般グレードの塗装品では、塗膜を5~7年ごとにチェックと再塗装、シーリングを5年前後でチェックと打ち直しのメンテナンスが必要です。かなり短いスパンでのメンテナンスが必要です。
外壁のメンテナンスには足場が必要で、再塗装や打ち直しの費用を合わせても、1回100万円以上とかなり高額なものとなります。塗膜とシーリングのメンテナンス時期がずれていると、メンテナンスの頻度が上がるだけでなく足場などの出費も倍増してしまいます。
大量に普及グレードの商品が出回っています。少しでも安く住まいを建てたいとの思いで採用に至るのでしょうが、適切に住まいを維持しようとすると短いスパンで高額なメンテナンスが必要になり、トータルでコストを考えるととてもコストパフォーマンスが悪くなります。だからと言って、メンテナンスをせず放置すると建物へ致命的なダメージにつながります。
安価な屋根材の化粧石綿スレートと共に、安いサイディングは目先の「安さ」だけで採用しない方が良いと思います。
高耐候性塗料を用いて10~15年の塗膜保証が付いた商品もあります。この長期保証が付くのは塗膜だけで、シーリングは対象外です。高耐候性のシーリング材も併せて用意されています。
設備の整った工場内での塗装と違って、現場での塗り直しに利用できる塗料は耐候性に劣ります。高耐候性のパネルも塗り直してからは塗膜の耐久性次第なので、およそ10年毎(用いる塗料の種別にもよります)に再塗装が必要になります。塗り直しは現場で行われるため新品同様の多色プリントは難しく、基本的には単色での塗り直しになります。単色で塗り直された石積風やレンガ調のサイディングは見るに堪えません。最初から単色でも綺麗な押し型のサイディングを選んでおく方が良いのではないでしょうか。もしくは、退色しないように短いスパンで高耐候性のクリアー塗装を塗り直し初期の意匠をできるだけ維持する方法もあります。
高耐候性パネルには、汚れ防止コーティングが施されています。親水コーティングは、汚れを水分(雨水)で浮き上がらせる作用があります。雨水の流れで浮き上がった汚れを押し流します。光触媒コーティングは、酸化チタンの強い酸化力により汚れを分解し、親水機能により汚れを浮き上がらせる作用を持ちます。雨水で汚れを押し流し、外壁の汚染を防ぎます。防汚の効果を発揮するには光の中でも紫外線が必要です。紫外線が当たらないと効果がありません。可視光線と違って紫外線はかなり散乱(乱反射)するので日陰でもある程度紫外線があたっており、それらの部分では効果を発揮します。
15mm厚の一般グレードのパネルの価格は、¥4,000-/m2(定価)程度ですが、塗膜10年保証の高耐候性のパネルでは¥5,000-/m2(定価)程度、塗膜15年保証の高耐候性のパネルは¥6,000-/m2(定価)程度と、割高となります。
金属サイディング
アルミやガルバリウム鋼板等を成形した裏側に発泡プラスチック系の断熱材が裏打ちされています。この断熱材の裏打ちはパネル形状の変形防止と雨が叩きつける音の防止のためと思います。断熱効果を謳ってありますが、通気工法では内側に通気層がきますので断熱効果は期待できません。非常に軽量で、施工がし易いです。軽量で建物への負担が少ないため、現存する外壁はそのままにして上からカバーする工法でのリフォームで良く利用されています。
金属板の表面に塗装が施されています。金属の質感を生かした塗装が多いのですが、窯業系サイディング同様凹凸のエンボス加工をした上にレンガやタイル模様を印刷したものもあります。
金属をわざわざレンガやタイル調に模する必要はないと思います。エッジが効かず丸く怠い金属板の成形では質感も劣るでしょう。せっかく金属を用いるのですから、金属の質感(素材感)を活かすべきだと思います。
シルバーの金属光沢の物は太陽光を反射して眩しく感じることがあるので注意が必要です。それで目が眩むことはないでしょうが、遠くの方までキラキラ光って目立つのを稀に見かけます。
金属製のため塗膜が劣化しても窯業系サイディングと違いパネルの吸水性は気にせずに済みますが、美観上そして防錆のために10~15年程度で再塗装が必要になります。パネルの継ぎ目や窓回りなどに施されるシーリング材の耐久性はおよそ5年前後です。漏水の予防のためにも、定期的なメンテナンスが必要です。
比較的錆びに強いアルミニウムやガルバリウム鋼板ですが、長期的には錆に要注意です。また金属は他の金属と接触した状態で水分があると錆を招くので、使用する釘やビスなどだけでなく、他の金属製品を加工する際に発生する切りくずや金属粉にも注意が必要(施工上の注意事項ですが)です。このような「もらい錆」は、錆びないといわれるステンレスをも錆びさせてしまいます。
薄い金属板でできており凹み易いので、物を当てないように気を付ける必要があります。家の周りで大きな物や重い物、長い物を運ぶ際にぶつけやすいので注意が必要です。塗膜を傷めてしまった場合は、すぐに処置しないと錆を招いてしまいます。塗膜のタッチアップで済めばよいのですが、塗料の耐久性に注意が必要です。車の塗装同様色を付けてごまかすだけではすぐに錆が来ますので、耐候性のある塗料を用いなければなりません。
タイル
色落ちや劣化が少なく非常に高い耐久性を誇る外壁材がタイルです。一方で、非常に重量があり建物の構造的負担が大きく、またコストは高くなります。
ラスモルタル下地に貼りつける湿式工法が一般的でしたが、最近では専用の下地パネルに引っ掛けて留め付ける乾式工法が用意されています。乾式工法では多少重量が軽減されますし、施工が容易になり工期を短縮できます。
タイル自体が色落ちしませんし、焼き物がゆえに耐久性・耐候性が非常に高く、再塗装のようなメンテナンスがほとんど必要ありません。塗装品と違って年を経るごとに重厚感が増すのは、大きな魅力です。
耐久性は非常に高いのですが、メンテナンスフリーではありません。タイルの割れ欠けなどが発生していないか、剥離脱落が無いかなどのチェックは必要です。またモルタル目地の剥離に気を付ける必要があります。また、他の外壁材同様窓回りなどどうしてもシーリングが必要で、シーリングに関してはおよそ10年を目安に打ち直しが必要です。乾式工法では、モルタルを用いないのでさらにメンテナンスが楽になります。ただ、タイル自体の劣化が非常に小さいので放置されやすく、下地材の劣化が非常に分かり難くいです。表面に現れにくいだけに注意が必要です。
耐久性が高いためにかなりの年数を経てからメンテナンスされることがほとんどです。タイルの脱落などで修復しようとしても色柄が全く同じタイルは生産中止になっていて入手不可能な場合がほとんどです。施工に利用した同じロットのタイル(現場の残り物)を予備として保管しておく方が良いでしょう。小さな補修では十枚程あれば足りると思います。将来の小さなフォームの可能性まで考えると、置き場所に困りますが面積の1~2割程度あると安心でしょうか。平物タイルだけでなく、出隅に利用する役物タイルも保管しておくとよいでしょう。役物タイルは、平物タイルを接着加工して作製することは可能です。
最高グレードの窯業系サイディングが¥7,000-/m2(材料定価)ほどに対し、タイルの乾式工法では下地のパネルが¥5,000-/m2(材料定価)にタイルが¥8,000-~¥30,000-/m2(材料定価)で合わせて¥13,000-~¥35,000-と結構高価です。
塗り壁
下地
古くは土塗り壁の下地でした。近年、ラスモルタル下地が良く利用されていましたが、最近では塗り壁下地用のサイディングがあります。
塗り壁の仕上げは連続して施工でき、目地のない壁を作るのは容易です。ただ、地震時の動き(建物の変形)や熱による膨張収縮の影響を吸収するために、下地には目地が取られます。
目地
一般のラスモルタルの場合は、約90cmごとに縦の目地、1階と2階の間に水平な目地が取られ、目地の多さが目立っていました。最近では、割れの発生しにくいモルタル調合品や山形ラスの使用、ファイバーネットの伏せこみなどで、かなり目地数を減らすことができます。
塗り壁下地用のサイディングでは、比較的簡単に目地の目立ちにくい壁が造れます。サイディングのパネルの伸縮を吸収するため、継ぎ目にはどうしても目地が必要です。その目地部分を、専用のパテとひび割れ防止のクロスを用いて目立たないようにしてあります。
クラック
塗り壁で大きな問題となるのは、下地のひび割れ「クラック」です。クラックができる主な原因は、下地材の膨張収縮と構造強度の不足です。
膨張収縮は、熱による膨張収縮や、ラスモルタルの初期の乾燥による収縮があり、ヘアクラックと呼ばれる比較的細かいひびが入ります。熱による膨張収縮はどの材料でも避けれられないので、目地を取りシーリングを施すことで対処しています。ラスモルタルの乾燥収縮によるクラックの対策は、収縮しにくい調合のモルタルの利用やラス形状の変更、ファイバーメッシュの伏せこみ等様々な工夫で割れにくい下地作りをします。施工の知識と技術が必要です。
地震等で建物が動かされたとき、構造耐力が低いとラスモルタルが追従できないほど変形し割れてしまいます。3階建てでは揺れによる変形は大きくなります。しっかりと構造的強度を持たせることでひび割れは防ぐことができます。
塗膜
モルタルも下地用サイディングも防水性は仕上げ材に頼っています。塗り替えのメンテナンスは非常に重要です。一般的には7~10年ごと、高耐候性の塗料ではおよそ15年を目安に塗り直しが必要でしょうか。塗膜以上にクラックの補修は重要です。塗膜にまだ防水性がある間にクラックが生じた場合は、見た目が悪くなっても部分補修しなければなりません。塗り直しまでの間見た目が悪くなりますが、放置すると漏水により構造体を傷めてしまいます。
自然素材系塗り壁(漆喰)
自然素材の塗り壁は種類が少なく、石灰が主成分の漆喰、西洋漆喰ぐらいしか選択肢がありません。輝くような純白は漆喰ならではだと思います。顔料を混ぜて着色した漆喰もあります。自然素材にこだわると、着色に使えるのは色土や天然顔料しかなく、色数にも限りがあります。漆喰では、松煙や灰墨を混ぜた黒壁、赤い顔料を混ぜた赤壁、黄土を混ぜた黄色い漆喰などが稀に見られます。
漆喰は、消石灰、砂、海藻糊、すさと水を練り混ぜたものです。消石灰は石灰石や貝殻を焼成してできます。ちなみに姫路城の平成の大修理では貝灰漆喰が使われました。消石灰の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムになり硬化します。炭酸カルシウムというと石灰石ですから、二酸化炭素と反応して元の石に戻るということです。この二酸化炭素との反応は100年ほどの長い時間が必要で、漆喰は時間が経過するほど硬くなると言えます。海藻糊を合成糊に変えて割れにくく作業性をよくした漆喰もありますが、自然素材とは言いにくくなってしまいます。糊が粘り気を出して作業性を高めますが、量が多いと収縮し割れ易くなります。割れを防止するために繊維質としてすさが混入されます。
漆喰の最も一般的な仕上げである押え仕上げは、中塗り、上塗りをして水が引いてくるとコテで押えてつや出し仕上げを行うという非常に手間と高い技術が必要な作業なので、工期が必要なだけでなくコストも結構かかります。鏡のような表面は凹凸があると光の加減でよくわかります。コテで真っ平な平面を作り出すには高い技術が必要です。
防火性に優れるため、古くから城や蔵の外壁に良く利用されています。強度面では雨がかかっても大丈夫ですが、長期的には黒ずみが発生しやすくなります。黒ずみを抑えるコーティング剤もあるようです。とはいえ、腰などの雨がかかる部分には他の汚れに強い素材で貼り分けるのが一般的でしょうか。
土壁の上に施された漆喰塗が、土壁との境目で剥離して剥がれているのを見かけることがあります。土壁の劣化による浮が原因のようで、今はラスモルタル塗や塗り壁用サイディングを下地としておりほとんど剥がれないようです。漆喰には伸縮性がないので、下地にひび割れなどが発生した場合に漆喰が吸収できず同じく割れてしまいます。強固な下地作りが重要です。
合成樹脂系塗り壁
セメントや合成樹脂などの結合材と、着色のための顔料、砂などの骨材が主原料です。一般の塗料と異なり、数mm~10mm程度とある程度の塗膜を形成します。骨材により質感もありますし、塗膜の厚みを出すことでテクスチャーがつけられます。
色・表情などバリエーションに富んだ外壁です。標準色が用意されていますが、調合してオリジナルな色を作れるものがほとんどです。また、仕上げには、コテ押え、刷毛(はけ)引き、ローラー塗、スプレー塗等と様々あり豊かな表情が出せます。特にコテを用いての仕上げは、型を用いないため特定のパターンがなく強い個性が出せます。
ひび割れの起こりにくいしっかりとした下地作りは必須ですが、伸縮性やひび割れに追従できる柔軟性がある仕上げ材を採用すると、よりひび割れに強い外壁が造れます。
用いる合成樹脂の種類により耐候性・耐久性が異なります。一般的には7~8年程度で塗り替えが必要です。高耐候性・高耐久性の商品だと15年程度で塗り替え時期がくるでしょうか。また、光触媒を用いたトップコートを用意しているメーカー・商品もあります。
豊富な色数と様々なテクスチャーを誇るジョリパット(アイカ工業)が有名です。
スーパー白洲そとん壁(高千穂シラス)
主原料の「しらす」とは、九州南部一帯に厚い地層として分布している火山活動による噴出物(軽石や火山灰)です。他に類似品がないため、種別ではなく商品名で紹介します。
しらす単独では固まらないので、硬化剤としてセメントが使われているようです。セメントが水と反応して水酸化カルシウムが発生し、水酸化カルシウムは二酸化炭素と反応して炭酸カルシウム(石灰石)となり、硬化するようです。この硬化の仕組みは、漆喰が硬化する仕組みと同じです。凝固剤だけでなく、着色剤、糊なども全て自然素材で作られています。
着色は天然顔料が用いられており、色数は少なく標準色が9色、特注もできますが出せる色にかなり制限があるようです。天然顔料を用いているためほとんど退色しません。
モルタル下地や塗り壁用サイディング下地の上に施工するその他の塗り壁と異なり、下塗りから仕上げ塗まで全てそとん壁材で造り、総厚み18mmです。ある意味無垢と言えます。サイディングなどの塗膜の劣化や、漆喰のように表層がはがれるというようなことがなく、ほとんどメンテナンスがいりません。心配なのはクラックの発生で、強い構造体作りと丁寧で適切な下地作りをしてクラックを防止する必要があります。
多孔質な軽石や火山灰が主成分のため、透湿性を持っています。この透湿性能を活かすには、下地に透湿抵抗の大きな構造用合板を利用しないことが大切です。透湿性のある構造用耐力面材については、2010.09.14にblogで書いています。
目地のない大きな壁を作ることが可能ですが、逆に言うと一度作業を始めると壁一面を塗り終わるまで作業を止めることができません。練った材料も時間と共に固まりますから、練るのと塗る作業のタイミングをしっかり管理しなければなりません。また作業中の湿度の変化や風の強弱の変化による乾燥速度が変わったりの影響があるのか、部分的にしみのような色の変化が出てしまう場合があります。施工にかなり気を使う素材です。
自然素材であること、塗り替えのメンテナンスが要らないこと、目地のない大きな連続した壁が造れること、凹凸が大きく豊かな土塗りの表情が造れることなどで、当事務所で最も採用件数の多い人気のある外壁材です。
個人的にフェイク物は嫌いです。印刷に使う色数も増え技術も良くなりタイルやレンガ模様も良くできています。しかし、タイルやレンガの模倣をどれだけ上手にやっても本物には成りません。タイルやレンガは経年変化で味わい深くなりますが、塗装では使い始めた途端からただ汚れていく一方です。本当はタイル貼が良いんだけど・・・、本当は塗り壁にしたかったんだけど・・・、そんな風に思いながら使うのは避けたいところです。
フェイクではなくサイディングだからこそできるデザインだと使う価値はあります。メーカーも窯業系サイディングだからこそできるデザインの物をもっと作って広めてもらいたいものです。